風鈴文楽夢綴り🌸 🌸 今日も笑顔で毎日ルンルンスキップ しよう🌸

果無山






       果    無    山

       夏の暑さにも冬の寒さにも負けぬ肉体が欲しい
       果てしない人生の葛藤に負けぬ気概が欲しい
       この生ある道に起つ俺の五体満足な肉片の集まりは
       脳や性器の活動までも虚無の世界へ押し流されて行くようだ
       空しさは悲しさは人の千倍あれど楽しさは何もなき
       よもやこの世に未練などありや
       酒に溺れて放浪せし俺の姿はあわれなる乞食よりも劣る
       一個のロボットのような五感のなき鉄片のような俺の骨肉よ
       何も生まれ出ずこの悲しき裸のなまけものよ
       世は騒々しくめざましく動く
       男女の営みと地獄図にみるような欲望的末期的な
       世界の中で貧困なる精神でまとった俺の命は
       どこへ行くのか
       激しい戦いに疲れた人生行路の道は美しい桜花が
       散るようなもの悲しさがある
       喜びはひとときで終わりいずれ淋しき秋のように
       深くて長い悲しい冬がくる
       俺の虚無的な肉片のどこにも芽を出す春はない
       美しき優しき蝶もみえず俺はただ乞食のように
       頭をたれて放浪せし
       世は幸せの笑顔にあふれているが万人すべて
       幸せの仮面を被った豚ではないかと俺は思う
       なにもかも世は涙だ
       俺の虚無的な身体の中にもなぜか涙腺だけはあり
       したたかな雫が毎日毎日落ちるのだ
       その涙は川となって俺の魂を揺さぶりさらに大きな
       大河となりて全身に恐怖の渦を巻き起こす
       俺の人生と俺のみえる世界を思う時涙は流れてやまぬ
       とどまりがたし涙の中で今日も明日も俺の
       虚無的な生活は続くのだ
       土に伏し野をかけ人生という果無山に登る俺の姿よ
       あわれなる後姿には大きな荷物を背負いて
       よろよろとしながら果無山に登るのだ
       高い高い峰をつたい尾根を越えて絶壁の青天をめざす
       そして果無山の頂に到達せし時俺はその頂で土とかし
       肉体は死すのだ
       果無山は今日も俺の遠いところで大きく
       険しくのしかかり悪魔のようにそびえたつ
       ひとりで歩くことは淋しく怖い道よ
       果てしない道なき道を果無山に登れと
       命令された兵のように迷い泣き倒れ伏し
       妖怪にうなされては果無山に登る
       遠いところで俺の人生の道を見下ろしている
       果無山は早く登ってこいといっているようだ
       悲しき人生の途中にみえる果無山は
       堂々として俺の未来にそびえたつ
       ああ人生への果てしなき俺の挑戦は果無山の
       頂に起つ日を夢見ながら毎日戦いの中で敗れ
       そして今日も明日も涙の酒に埋没してしまうのだ































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